手紙(80.9.26)秋のお祭り

11月13日の夜、パリで起きた同時多発テロ事件に、私の二人の友人が遭遇していたということを、後で聞いてびっくりした。ひとりはイタリア人で、もうひとりは日本人。二人ともたまたまパリに滞在していたという。二人とも無事だったからよかったとは言うものの、今では、何時何所で何が起こっても不思議ではない。そう思うと、35年前、家族5人で5年間ドイツで何事もなく暮らしていたころは、遥か昔のことに思えて来る。
言葉も出来ず、子どもたちの学校も決まらず、おまけにお金の蓄えもなく、それでも、「同じ地球の上、鬼が棲んでるわけでもあるまいし・・・」と言ってくれた人の言葉を信じて、自分でも、なんとかなるさ、と思い、夢をいっぱい膨らませて、ジャンプ!!それは、ついこの間の、たった35年前のことなのに、悲しいことに、なんと世の中は変わってしまったことだろうか。 
1980年9月26日
いよいよレイジが独りで下校する練習を始めました。まず私が、リーデンベルクから市電のシャロッテン駅まで下って、そこで、学校のあるクレアヴァルトの丘から、バスで下ってくるレイジと落ち合うことにしました。練習の初日の朝、霧の深い肌寒い日だったので、チカシと二人が登校してから、迎えにいくまでとても不安でしたが、待ち合わせの時間に駅で待っていると、赤いランドセルを背中に、小さな体をチョコチョコ揺らして、無事にレイジが階段を下りて来るではありませんか。なにしろ、途中で何事かが起こっても、連絡するすべを持っていないと思うと、ヒヤヒヤですが、兎に角実行する他ありません。明日からは、全行程独りで帰宅すると、彼は張り切っています。さて、明日は、ミツタケの幼稚園で感謝祭です。小さな籠に収穫物を入れて、子どもたちが幼稚園に持っていきます。そして、その翌日は、ミカエル祭。手作りの弓と矢で、ドラゴンと戦います。さて、今週の火曜日にオペラ座に、クシシュトフ・ペンデレツキのオペラ「失楽園」を観に行きました。6マルクで購入した天井桟敷の席から舞台を見下ろし、伝統あるヨーロッパのオペラ座の観客とオーケストラの雰囲気に感動しました。では、また書きます。お大切に、久子