目に見えない戦争

4月になって、コロナウイルス感染拡大の勢いは増すばかり。天使館の活動も暫くの間ストップ。汗ばむほどの暖かな陽光を受けて、花のあとの桜の枝に柔らかな若緑の葉っぱが一斉に伸びてきた。鳥が楽しげに飛んでくる。誰も来ない静止した時間。うっとりするような甘美な一瞬、色が色でなくなり全てが反転したような……。
先日の「DUOの會」で、写真家の高橋恭司さんから写真集を頂いた。見開きのページに「写真はいつも世界の終わりを続ける」とあった。不思議な光の色。私の好きな色合い。輪郭が溶け合い、反対側から見ているような………。胎児の目に映った世の中の風景みたい………などなど、と勝手な想像が膨らんでいく。
高校生の時に読み始めて、何度も挫折を繰り返して、いまだに読み続けているトーマス・マンの「魔の山」。今や、ハンス・カストルプ青年と一緒に呼吸しているつもりに…。
目に見えない戦争の只中でも、やっぱり愉しく生きていたい。