細江英公先生のお祝いの会

「細江英公氏の文化功労者顕彰を祝う会」に、叡とともに出席した。会場となった新宿京王プラザホテルのエミネンスホールは、これまでの先生の偉大な功績をたたえて、各方面から集った多くの方々で賑わった。
会場で、詩人の白石かずこさん、故澁澤龍彦氏の夫人龍子さん、大野慶人さん、平凡社の清水壽明さん、溝端俊夫さん、故種村季弘氏のご子息や、故土方巽氏のお嬢さんガラさんなど、懐かしい方々にお目にかかった。
2003年の秋、川崎市岡本太郎美術館で開催された「肉体のシュルレアリスム」―舞踏家土方巽抄―展の、オープニングの日だったと思う。イベント会場に、細江先生が杖をつかれて入ってこられ、膝を庇うようにゆっくりと私の隣の空いている席にお座りになった。
私が膝の具合をおたずねすると、「膝がどうもねぇ。具合よくない」などとおっしゃる。私も経験があるので、きっとお辛いのだろうなぁ・・・と思っているうちに、取り壊されたアスベスト館の稽古場の床板を敷いて作った舞台に、故大野一雄先生が車椅子で登場。すると、前列の桟敷の観客たちが、一斉にカメラを取り出し、あちこちでシャッターを切り始める。その途端、それまで私の隣で、杖の頭に両手をのせて座っていた細江先生が、やおら杖を椅子の下に転がして、鞄から小さなカメラを取り出して、最前列のセンターめがけて、ベースに滑り込みする野球選手のように、その巨体を横滑りさせ、横になったままシャッターを押しはじめた。その敏捷さ、素早さを目の当たりにして、私は、なぜかとても嬉しくなったのを鮮明に覚えている。
お祝いの言葉に応えて、先生は「今私は79歳ですが、2039年までは仕事をして頑張ります」と話された。2039年は写真発明200年にあたるそうだ。
お話を聞きながら、また私はなぜか嬉しくなった。