今日は、リハビリの日。11時にミルノさんが来てくれる………美しい晴れ日なのに、美しすぎて、外に出たくない………朝から背中に根が生えて、ベッドから起きられない……どうしよう。
グズグズしているうちに、玄関に明るい声「こんにちは」………あっ、ミルノさんだ。今日は、体が重いので……疲れているので……心の中の囁きを聴きながらも、一方で、明日という日は無い、と囁いている。よし、勇気を出して………。。
外に出ると、あぁ気持ちがいい光と風 ミルノさんありがとう、と心の中で呟く。
午後、最近ヘルパーのお仕事を始められたミナコさんが電話をくれた。規則正しく静かに暮らす100歳の一人暮らしの老婦人のことを話すミナコさんの声を聞いているうちに、からだの中で固まっていた私の心がだんだんほぐれてくる。ミナコさんありがとう。
寝る前に、ヘッセの詩を読む。
「慰め」 Glück 高橋健二訳
数多くの生きて来た年々が
過ぎ去り、何の意味ももたなかった。
何ひとつ、私の手もとに残っているものもなく、
何ひとつ、私の楽しめるものはない。
限り知れぬ姿を
時の流れは私のところへ運んで来た。
私はどれ一つとどめることができなかった。
どれ一つとして私にやさしくしてくれなかった。
よしやそれらの姿は私からすべり去ろうと、
私の心は深く神秘的に
あらゆる時を遥かに越して、
生の情熱を感じる。
この情熱は、意味も目あても持たず、最近の一切を知り、
戯れている時の子どものように
瞬間を永遠にする。