2、3日前の夕方、日がな一日降り続いた雨があがり、湿気を含んだ蒸し暑さの中を、アキラと散歩に出掛けた。空一面に広がった灰色の雲の向こう側が、地球の陰に隠れようとしていた陽の光に照らされて、灰色の空一面が一瞬ピンクに染まり、次の瞬間、仄かなピンク色は消え失せ、再びグレイの空に変わった。気がつくと辺りはもうすっかり夜になっていた。
9月も残り3日。今日もどんよりと曇り空で蒸し暑い一日。秋は何時来るのだろうか。
もう私の眼は、陽の當っているあの丘に行っている、
まだ踏み出したばかりの道に先立ち。
すると私たちの掴むことのできなかったものが、
あざやかな姿を浮かべて、遠くから私たちを掴む―
そして私たちがそれに達しないうちに私たちを
殆どまだ自分でも気付かぬ私たちへと変えてしまう。
私たちの合図に応じて彼方からも合図が来る・・・
だが私たちはただ吹寄せる向かい風を感じるばかり。 『散歩』リルケ (高安國世訳)