2008.3.21

先日知り合いにのダンス公演を観に行った。若い人が中心のカンパニーなので当然客席も若い男女が多い。中には白髪の初老の男性や、髭もじゃのおじさん、出演者の身内らしき人などが見受けられる。多くはダンサーやミュージシャンの卵、あるいは何かダンスに関わっていそうな人などなど。めったに八百屋のおじさん肉屋のおばさん風の人はいない。ダンス公演でもコンテンポラリーの公演と舞踏公演では明らかに観客がちがう。芝居になるともっとちがう。
3年前南米チリのサンチャゴで叡が公演をした。サンチャゴにある日本大使館の後援で、市民のためのダンス公演なので、入場料無料の二日公演。会場は手ごろな広さで、天井は高くどっしりとしたクラシックな雰囲気で悪くない。が、いくら日本からやって来たとはいえ、当地では全く無名のダンサーを、しかも無料の公演を誰が観にくるのだろうか、しかも二日間も、といささか不安だった。
さて初日、開演時間が迫るにつれて、何やら劇場の入り口が騒がしい。中から覗いてみると入り口の扉の向こう側におびただしい群衆が押し寄せているではないか。前列の人はガラスの扉に張り付いてドンドンと乱暴にガラスを叩いてわめいている。中側からはスタッフが興奮して怒鳴っている。一触即発状態だ。現地の人に聞くと、みんな叡の公演を観に来た人たちだ、と言う。嬉しいことだが、けが人がでなければ心配していると、制服制帽で身を固めブーツを履いたがっしりした警官が二人乗込んできたのには驚いた。結局入りきれない人が数百人あえなく帰されたそうだ。
これが日本だったらどうだろう。最も遠い国からやってきた、日本では知名度の全く無いダンサーが公演をするとしたら、お客は来るだろうか。たとえ入場無料でも、いや無料だからこそ、人々の関心は期待できない。
チリとは“世界の果て”という意味だそうだ。日本から最も遠い国で、隣のおじさんおばさんのような気の置けない人々と出会えて幸せだった。
それにしてもダンスって何なのだろ?