三島由紀夫『サド侯爵夫人』

昨夜、大雪の金沢から無事にミツとなおかは帰宅できたようだ。今朝早く、叡は京都へ………大寒波襲来というのに私の周りは目がまわるように忙しい………私だけ暖かいキッチンでぬくぬくと座って甘酒を呑みながら………南天の実や杏の芽を啄みにくる番の雉鳩を眺めて………風は冷たいけど光のなかには春の気配がある………なんて……何と贅沢なヒサコサン!

みな子さんが、宮本亜門演出の三島由紀夫の『サド侯爵夫人』を新宿のサザンシアターに観に行ってきた、とメイルをくれた。オール男性キャスト……面白そう! 観たいな……でも一人ではいけない………残念無念。
大学時代………初演の『サド侯爵夫人』を………新宿東口の出来たての紀伊国屋劇場で観た。ルネ夫人・丹阿弥谷津子 モントルイユ夫人・南美江 アンヌ・村松英子………ルネ夫人の最後の一言には………学生だった私はびっくり仰天………当時 文学座のファンクラブ会員だった私はますます芝居に夢中になる………懐かしい!

ルネ夫人の最後の一言について………ユルスナールは書いている。
「いったい何が起こったのか。かつて牢獄の暗がりで対面していた夫のなかに、理想的な悪の化身を認めて愛していたサド侯爵夫人は、このだらしなく肥った男にむしろ嫌悪を感じたのか。それとも………修道院に引きこもって、遠くから夫のために祈っているほうが賢明だと考えたのだろうか。むろん、………夫の救いのために祈るのではなく、神に負わせられた呪われた創造主の人生を歩んでいくために祈るのである。それとも………、もはや格子によって隔てられていない夫に会うのが怖かったのだろうか。謎は以前よりもさらに深まって、サド公爵夫人の上に立ちこめるのである。」「三島由紀夫あるいは空虚のヴィジョン」(澁澤龍彦訳)より抜粋

三島由紀夫は澁澤龍彦の『サド公爵の生涯』を読んで、この一言の謎から『サド侯爵夫人』という戯曲を生み出したという。
私は今………我が家の本棚に並んでいる澁澤龍彦『サド侯爵の生涯』を取りだして………キッチンに座ってはまっている。